東京女子医科大学化学2013年第5問

  • A あるトリペプチド(以下、ペプチドAとする)は動植物界に広く存在し、生体内において解毒や酸化防止など重要な役割を担っている。ペプチドAは、以下に示した7種類のα-アミノ酸のうちのいずれかで構成されている。ただし、(  )内は、α-アミノ酸を$\text{H}_2\text{N}-\text{CH(R)}-\text{COOH}$と表したときの側鎖Rを示す。

    • (1)グリシン$(-\text{H})$
    • (2)アラニン$(-\text{CH}_3)$
    • (3)セリン$(-\text{CH}_2\text{OH})$
    • (4)フェニルアラニン$(-\text{CH}_2\text{C}_6\text{H}_5)$
    • (5)システイン$(-\text{CH}_2\text{SH})$
    • (6)グルタミン酸$(-\text{CH}_2\text{CH}_2\text{COOH})$
    • (7)リシン$(-\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{NH}_2)$

    ペプチドAを構成するアミノ酸の種類とアミノ酸の配列順序を決定するため、以下の操作1~3を行った。

    操作1:ペプチドAを酸で完全に加水分解したところ、3種類のアミノ酸が生成した。3種類のうちの1つのアミノ酸の等電点は、3.2であった。また、1つのアミノ酸は、不斉炭素原子をもたなかった。

    操作2:ペプチドAを弱い酸で加水分解したところ、2種類のジペプチド(BおよびC)が生成した。BとCを分離した後、それぞれに濃い水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、その後酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えると、いずれも黒色沈殿を生じた。

    操作3:ジペプチドBとCの水溶液それぞれを、pH10.0の緩衝液に浸したろ紙に図のように塗布し、電気泳動したところ、BとCはいずれも陽極側に移動したがBの移動度の方が大きかった。

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    またその後の実験により、ペプチドAのペプチド結合の1つは、アミノ酸の側鎖の部分が結合を形成していることが明らかになった。

    • 問1 操作1のみから、ペプチドAに含まれると推定できるアミノ酸を上記(1)~(7)からすべて選び番号で答えよ。
    • 問2 操作2で生じた黒色沈殿の化学式を書け。
    • 問3 操作2のみから、ペプチドAに含まれると推定できるアミノ酸を上記(1)~(7)からすべて選び番号で答えよ。
    • 問4 操作2で生成した2種類のジペプチドB、Cのそれぞれについて、構造式を例にならって書け。ただし、左端には遊離のアミノ基を有するアミノ酸を配置し、ペプチド結合の部分は価標を用いて表せ。また、光学異性体については考慮しないでよい。
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  • B 構成脂肪酸としてステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸のすべて、またはいずれかを含む油脂8.84gを、完全にけん化するには水酸化カリウム1.68gが必要であった。同じ油脂22.1gにヨウ素を反応させたところ、19.05gのヨウ素が付加した。この油脂を構成する脂肪酸として最も適当なものは、次のア~カのどれか。ただし、各脂肪酸の示性式は下記の通りである。

    • ステアリン酸 $\text{C}_{17}\text{H}_{35}\text{COOH}$
    • オレイン酸  $\text{C}_{17}\text{H}_{33}\text{COOH}$
    • リノール酸  $\text{C}_{17}\text{H}_{31}\text{COOH}$
    • ア.ステアリン酸1分子とオレイン酸1分子とリノール酸1分子
    • イ.ステアリン酸2分子とリノール酸1分子
    • ウ.ステアリン酸2分子とオレイン酸1分子
    • エ.オレイン酸2分子とリノール酸1分子
    • オ.リノール酸2分子とオレイン酸1分子
    • カ.リノール酸3分子