東京女子医科大学化学2012年第3問

次の文章を読み、以下の問いに答えよ。解答はすべて記述用解答用紙の所定の位置に書き込むこと。

生体内では、食物として摂取したa) デンプンは、複数の酵素によってグルコースに加水分解された後、細胞内で多段階の反応によって最終的にはb) 二酸化炭素と水にまで酸化される。この間に発生するエネルギーの一部はATPに蓄えられる

一方、エネルギーを必要とするときは、ATPに蓄えられたエネルギーを加水分解によって取り出して利用する。

ATPの構造を図Aに示す。

生体には、グルコースからグルコース6-リン酸をつくる反応があり、この反応を熱化学方程式で表すと\eqref{ab}式のように書ける。$\underline{\text{c}) この反応は吸熱反応であるが、}$$\underline{\text{ATP}の加水分解反応(\eqref{ac}式)と連携して}$$\underline{起これば進行しやすい反応になると考えられる}$。

\[グルコース+リン酸=グルコース6\hspace{-.2em}-\hspace{-.2em}リン酸+\text{H}_2\text{O}-14\text{kJ}\tag{1}\label{ab}\] \[ \text{ATP}+\text{H}_2\text{O}=\text{ADP}+リン酸+31\text{kJ}\tag{2}\label{ac}\]
tokyojoshiika-2012-chemistry-3-1
  • 問1 ATPの構造を示す図Aにおいて、矢印1~矢印3で示した結合のうち、高エネルギーリン酸結合と呼ばれる結合すべてを矢印の番号で答えよ。
  • 問2 下線部a)の反応に関与する酵素名を2つ書け。
  • 問3 ADPの名称を日本語で書け。
  • 問4 下線部c)において\eqref{ab}式と\eqref{ac}式が連携する反応の熱化学方程式を書け。
  • 問5 下線部a)や下線部c)の反応には、酵素が関与している。一般に、酵素はどのような働きをするか。次のうちから当てはまるものを選び記号で答えよ。
    • ア 反応熱を小さくする。
    • イ 反応熱を大きくする。
    • ウ 活性化エネルギーを小さくする。
    • エ 活性化エネルギーを大きくする。
    • オ 平衡定数を小さくする。
    • カ 平衡定数を大きくする。
  • 問6 以下に示した\eqref{ad}式~\eqref{af}式の熱化学方程式を用いて、グルコース(固)の燃焼熱を求めよ。 \[ \text{H}_2(気)+\dfrac{1}{2}\text{O}_2(気)=\text{H}_2\text{O}(液)+286\text{kJ}\tag{1}\label{ad}\] \[ \text{C}(黒鉛)+\text{O}_2(気)=\text{CO}_2(気)+394\text{kJ}\tag{2}\label{ae}\] \[ 6\text{C}(黒鉛)+6\text{H}_2(気)+3\text{O}_2(気)=\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6(固)+1260\text{kJ}\tag{3}\label{af}\]
  • 問7 下線部b)のように、1モルのグルコースが細胞内で完全燃焼する時に発生するエネルギーがすべてADPからATPが合成されるのに使われると仮定すると、何モルのATPの合成が可能と考えられるか。答えは小数以下を四捨五入して整数で書け。